2011年10月28日金曜日

幻との出会い

今日は休日出勤の振替休をいただいたので,一人でちょいお出かけ。

どこへ行ったのかというと,石神井公園の近くにある JA あおば石神井ファーマーズセンター


何をしに行ったかというと,……えぇ,ちょっとビール買いに……

ウチからだと歩く時間も入れると電車乗り継いだりして1時間半近くかかるんだが,どうしても行きたい理由があった。

金子ゴールデンという,二条大麦がある。これは,1900年に現在の練馬区豊玉で金子丑次郎という人が国産ビールの需要を予見して育成した国産初のビール用大麦。次第に醸造に使われることが少なくなり,戦後はほとんど栽培されなくなってしまった幻の大麦なのだ。それを平成15年にJAと練馬区内の農家が復活させ,地ビール化に成功したということ。

それが,「金子ゴールデンビール」


このビールの存在は今年の5月か6月くらいに知っていたんだけれど,何といっても,練馬区内の 4ヶ所のJA直売所でしか扱っていないということで,なかなか足を伸ばすことができなかった。そういう意味では,いい休日だったなぁ。

醸造しているのは,練馬区内ではなく,福生にある石川酒造さん。こちらは「多摩の恵」ブランドの地ビールでおなじみ。多摩の恵には,瓶内で二次発酵させたボトルコンディションのペールエールがあるのだが,実はこの金子ゴールデンビールも,それと同じ技法で開発された同じスタイルのペールエールなのである。

まだ若いので,少し寝かせてから味わった方が深みが増すんだろうけれど,とりあえず,今の段階も味わっておこうと思い,1本開けてみた。色は,少し濁りのある黄金色。リンゴを思わせるようなフルーティな香りがツンとくる。次第にいわゆる干し草のようなアロマが支配的になるかな?苦味はしっかりしていて,結構長く後を引くけれど,モルト由来のほのかな甘みもある。後味にもその甘みは残るんだけど,ちょっと独特な甘み。表現するのが難しいけれど,トウモロコシとか,その手の穀物を食べたときのような甘みに似ている。ボディも思ったほど重たくなく,ミディアム程度かな?という感じ。ちなみにアルコール度数は 5..5% と標準的。

全体的には悪くないけれど,やっぱり少し若い印象だ。1年,2年と経つうちに味わいは変わってくるだろうから,残りのものはじっくり寝かせておこう。

ちなみに,金子ゴールデンで作った麦茶というのも買ってきた。普通麦茶は六条大麦を使うが,これもどんな味わいだか楽しみ。

そう言えば,常陸野ネストのニッポニアも金子ゴールデン使っていたよなぁ。

2011年10月27日木曜日

洗脳と教育

気になっている本があったので,図書館で借りて読んだ。確か,2ヶ月くらい前に予約したんだが,最近になってやっと順番が回ってきた(買えってか?)。

高橋誠「かけ算には順序があるのか」(岩波書店)

最近の小学校では,

6人に4個ずつミカンを配ります。ミカンは全部で何個いりますか?

という問題に対して,

6×4=24

と書くと,答の24個はマルだが,式はバツにされるって話。理系のお父さんが学校に文句言ったり,ネットに書きこんだりして,騒動になることが少なくないという。

…オレのことか…??

まだ,僕はこの事態には遭遇していないけれども,やっぱり小学校の算数の教え方には違和感を感じることは少なくない。割り算とかデシリットルとかさ。ただ,ボクが疑問を感じるのはいつも一貫していて,教えている内容ではなく,教え方なんだよね。このケースもどうやら,そういうことらしい。タイトルだけだと,この本の著者がどっち派なのかわからないので,読むまで心配してたんだけど,どうやら,ボクと同じ派だったようだ。ってか,常識的に見て,どう考えてもそっちが多数派だと思う。ちなみに「かけ算の順序問題」はネットでかなり議論が白熱した歴史があるようなので,以下では,恐らく既に議論し尽くされていることを承知で,僕なりの見方を書いてみよう。

小学校の先生方,というか,学習指導要領の言い分はこういうこと。

かけ算とは「1つ分の数」×「いくつ分」 の順序で式を書かなくてはならない。
つまり,被乗数が「1つ当たりの数」であり,乗数が「個数」でなくてはならない。
したがって,上の問題の場合,1人当たりのミカンが4個で人数が6人だから,
4×6=24
と書かなければならない。

だと…。ご存知の通り,かけ算には交換法則というのが成り立つわけで,答えはどっちでも同じわけだが,交換則は九九を一通りやった後に教える,というか九九表を見たりして,子供たちが自主的に発見することを期待するので,この時点で教えるべきではないってな話だ。

なんだよ,それ?

小学校で教えていることはまるっきり嘘ではない。ただ,教え方と違っていたからって,バツにすることないだろ?本の論調も九九の歴史なんかを手繰りながら,結論としては僕と同じ方向へ持って行ってくれているので,自分が少数派ではないことを確認できてホッとしたというわけ。

しかも,上の論法にはそもそも無理がある。何で「1つ当たりの数」をミカンの数にして,「個数」を人数にしなければならなかったのか?逆に,「1回当たり6人にミカンを配る」という試行を「4回」繰り返す,と考えれば,「1つ当たりの数」は6人になり,「個数」は回数,すなわち4回になるわけで,

6×4=24

でも問題ないことになる。本でもこのことは指摘されている。そもそも,かけ算と割り算は互いに双対な関係にあり,割り算は僕が前に書いたように,「1つ当たりの数」を求める操作に他ならない。例えば,4×6=24 という関係式は,分数で

24/6 = 4   あるいは   24/4 = 6

という式と同値であるわけだ。つまり,1人当たりのミカンの個数(左の式)を考えようが,1回当たりに配るミカンの個数(右の式)を考えようが,どれも偽りならざる真実である。このことは数学者の遠山啓も指摘していて,本の中でも,彼が

かけ算は「1あたり分」から「いくつ分」を求める計算である

と定義した上で,

6×4 でも 4×6でも,どっちでもいい

と論じていることが紹介されている。つまり,同じ問題,一つの真実をどっちの側面から見るかってだけの話なのよね。だからやっぱり,6×4がマチガイってのには,納得できない。子供が「いくつ分」を先に書いてしまったのならともかく,もし,「1当たり分」が6個だと考えて,すなわち,教科書や先生とは違う側面からこの問題を捉えて6×4という式を書いたのだとすれば,それは子供の想像力,理解力をたたえて,さらに伸ばしてあげるべきで,決して否定すべきではない。そんなことを教育者がやってはならない,と思う。

そもそも,後になれば,乗法の交換法則なるものがあることを子供たちは知ることになるわけで,なぜ,低学年ではそれを隠そうとするのか,その意図がわからない。リットルの書き方も同じこと。学校ではL,mLと書くように習うが,家の冷蔵庫に入っている牛乳パックには,ハッキリと「1000ml」と書いてある。じゃ,学校と世の中のどっちが正しくてどっちが間違っているのか?

子供たちに「今見せたくないもの」「今教えたくないもの」を執拗に隠そうとする態度は,東京都の青少年健全育成条例なんかとも発想が一緒だと思う。「臭いものにフタ」みたいな思想が見え隠れして,ものすごくイヤな感じだ。一歩外に出れば,学校では習わないもの,教えてもらえないものが世の中にはゴロゴロしている。それを隠してどうなる。子供たちがそれを目にすることを認めた上で,教えを説くのが本来の教育の姿であり,かたくなに一側面だけからの見方をゴリ押しするのは,カルト的あるいはセクト的な洗脳に近い。どうしても生理的に受け付けないんだよな。

ある意味,教育よりも洗脳の方が方法論としては楽なのかもしれない。その意味では,一つの物差しにしがみつき,考えることをやめてしまった教師が増えるのは,とても怖いと思う。しかし,上の本の最後には,

「順序固守派」だった小学校の先生が何人かその考えを改める発言をしている

とある。こういう人たちは考える能力のある先生たちなんだろう。このことは歓迎すべきだ。ただ,怖いのは,その背後に考えることをやめてしまったような人たちが何人くらいいるかってことなんだよな。人を教育するってことは,相手に頭を使わせるだけじゃない,むしろ,自分がそれ以上に頭を使うことなんだよ。違いますかね?

2011年10月23日日曜日

TOKYO

僕が 1 回目から参加している某国際会議。2005年の 2 回目からは 2 年に 1 回,奇数年の開催となっている。今年は 5 回目で中国で行なわれた。で,こないだ中国に行ったときに

次回は東京でっ!よろしくっ!

みたいなことになったんだが,国際会議とは言っても,規模のちっちゃい国際ワークショップ。都内の会議場みたいなの借りたんじゃ,経済的にかなりキツイ。しかも,ボクの場合,都内だと出張扱いにならないし,宿泊費も出ないので,基本,ラッシュの電車で毎日通いになる。それは避けたい。

というわけで,妙案だと思ったのが,八王子。国際会議を八王子でってのもあんまり聞いたことがないが,駅前の学園都市センターなら,一日2万円くらいで借りられるじゃん!バンケットもうかい鳥山あたりが使えるじゃん!

グダイディーア!

と思ったんだが,調べてみたら,3ヶ月前からの申し込みで,重なった場合には抽選…そうだった。前に学校のイベントでホール借りた時も,危うく抽選させられるとこだったんだ…

それじゃ使えないのだ…

こちとら,平日5日間同じ部屋をぶち抜きで借りたいが,さすがにそれだと抽選は免れまい…抽選に外れて開催2ヶ月前になって,会場変わりましたぁ,みたいなことは避けたい。

というわけで,今,困ってます。一応,学会の協賛を取れば,東京タワーの下の「あそこ」はテナント料金で借りられるってことまでは確認してあるんだが…他にいいとこないかなぁ?某H君が2年後も職場変わってなければ,某大学でやることも可能だけどなぁ…

ちゅうことで,東京都内 or その周辺で,成田,羽田からのアクセスが良く,1 日5万円以下で 70 名程度の会議室を無抽選で一週間借りっぱできそうなところ,ご存知でしたら,私に連絡してくださ~い。

耳寄りな情報,お待ちしております。

2011年10月22日土曜日

インドア派

寒くなってきたので、ベランダのプランターに植えてあったアボカドを鉢に植え替えて家の中へ入れてみた。さてさて無事に冬を越せますかな?

 
 
ちなみに現在高さ約30センチ。果たしてどのくらいデカくなるものやら…

2011年10月17日月曜日

脱・コミュニケーション


えー,

北九州市立大学の小嶋です。

自分でも知らないうちに電撃移籍してたのかと思いました。もちろん,完ッ璧な間違いですので,ご安心あれ…むしろ心配だってか?ってか,なんでこういう間違いが起こるんだか。

というわけで 3 週間ぶりのご無沙汰でした。この間,いろいろ忙しかったり,ここ 9 日間は中国に出張していてココにアクセスすることすらできなかったので,許してちょんまげ。

というわけで,今日は中国出張のご報告。前半(9日~12日)は桂林で行なわれた IWSDA2011 という通信のための信号設計に関する国際会議,その後,大連に移動して13日~16日は IIHMSP2011 という情報ハイディングとマルチメディア信号処理に関する国際会議でした。

IWSDA の方は 2 年に一度,日本と中国で交互に開催しているもので,前回の 2009 年は福岡で,僕もプログラム委員長を務めていました。次回は東京らしいのでまた働くことになるっぽい。桂林では僕が研究発表し,大連ではそれの延長に当たるような話を専攻科の学生に発表してもらいました。特に大連での学生の発表内容は評判が良く,この 2 編を中心にもう少しブローアップしてフルペーパーにしようかと思ってます。

さて,仕事の話はこの辺で終わりにして,やはり中国,4 千年の歴史は侮れないってことで,少し小噺をば。上のネームタグの件もそうだけど,いろいろ想定外のことがありました。その一つが大連で行なわれた IIHMSP。この会議,1ヶ月くらいまで大連のどこで行なわれるものやら,アナウンスが全然なく,本当にあるんかいな? というくらい不安でした。さすがに会議はきっちり行なわれたんだけど,初日参加受付をしたときに衝撃が!

通常,会議の受付をすると,プログラムやらネームタグやら,予稿集の CD-ROM やらが入ったバッグを渡されます。今回はそれに加えて,もう少し大きな袋が付いてきました。

なんじゃこれ?

と思って開けてみると,これが,海鮮珍味,いわゆる「乾き物」の詰め合わせ。サキイカやら干しエビやら…まぁ,大連は海に面しているから海産物が名産なんだろうけどさ…今までいろんな国際会議に出席してきたけど,お土産でおつまみセットをもらったのは初めての経験。まぁ,コストは大したことないんだろうが,450ドル払った参加費の一部が珍味に化けたのかと思うとちょっとやるせない気になりましたなぁ。

ちなみに,中国ではほとんど英語は通じない。まぁ,わが国も大して変わんないのかもしれないけれど,何か食べに行ったりして英語で話しかけても,中国語でまくしたてられる。だいたい,その時点で通じないことくらいわかるだろうに,その後も執拗に中国語でいろいろ聞かれる。あんまりしつこいので,日本語で

だからわかんねぇ,っつってんだよ!

とか言ってみたんだが,それに対しても中国語でいろいろ返してくる。この強さは一体何なんだ?世界で一番話されている言語ゆえの自信か?この間にやり取りされた情報量は限りなくゼロに近いんだが,宇宙人のジョーンズ君あたりが見たらかなり流暢にコミュニケーションを取っているように見えるんだろうなぁ。

しかし,考えてみると,程度の差こそあれ,同じようなことはヨーロッパあたり,ドイツ,フランス,イタリアなんかに行っても体験するわけで,異国語に対して母国語で返すというのは,意外と世界標準だったりするのか?日本人がまじめ過ぎるのかもしれないよね?日本でも英語で道聞かれたりしたら,

え?何?何言ってっかわかんねぇよ

とか,

えっとねー,まっすぐ行ってぇ,右!

とか言ってもいいんじゃないですかね?日本人は外国人に対してあまりに卑屈,というか,あまりに寛容すぎるんじゃないだろうか?僕んとこにも今,フィンランドの留学生が来ているけど,分かりにくいと困るからと思って,英語で話しがちになる。だけど,向こうは日本語を学ぼうという意志もあるから,今度から基本,日本語にした方がいいかもなぁ。ま,ちょっと意味合いは違うけどね。

いずれにしても,英語が話せれば何とかなるってのは実は幻想で,少なくともグローバルスタンダードではないのかもしれないですね。まぁ,校内の立場的に,ボクがこういうことを言うべきではないんだろうけどさ。

長くなりました。

最後におまけ。一応,空き時間にいろいろなところを見たんで写真をいくつかご紹介。

まず,桂林の IWSDA の会場は両江四湖という名所の一つ,榕湖という湖のほとりにあり,すごくキレイなところでした。下は湖に浮かぶ日月塔という,いわゆるツインタワー。


Conference Tour では,桂林観光の目玉,漓江の川下りに行きました。曇っていたけれど,これが絶妙に山水画のような風景を醸し出して,なかなかでした。


大連は,会場の大連理工大学が市街地から離れていたので,なかなか歩きまわる時間がなかったけれど,一昨年から公開されたという「特急あじあ号」を見に行ってきました。日本統治時代に大連からハルビンまでを結んだ日本製の特急。70 年以上前に 700 キロを 7 時間半で走ったというんだから,当時から日本の技術力がいかに優れていたかがわかります。流線形のフォルムがアールデコのポスターみたいでグーよね。


本当は時間があれば旅順の方まで足を伸ばしたかったんだけれど,決して遊びに行ったわけではない(←ココ大事!)ので,それはまたいつかのお楽しみ。

というわけで,以上,報告終わり。

さぁ,明日は科研の申請書仕上げないとなぁ。一気に現実ですわ。