2016年12月13日火曜日

上陸

アメリカのクラフトビールは日本中のどこに行ってもそれなりに手に入るようになったが,昨今はオーストラリアニュージーランドといった南半球の国々のビールも日本にいながらにして楽しめるようになった。たとえば,8 Wired とか,Holgate などといったブランドを手にとったことがある方もいるだろう。

そして,また一つ新しいブランドが日本上陸を果たした。

オーストラリアはメルボルンに拠点を置くサンダーロード・ブルーイング(Thunder Road Brewing)である。ここのビール,今年9月のビアフェス横浜でもお披露目されていたので,楽しんだ方もいるだろうが,とうとう手軽に入手できるようになった。

僕のブログを昔から読んでいる方は,何度か名前を聞いたことを覚えているかもしれないが,僕はブルワリーの立ち上げ以前から,もうかれこれ6年以上のおつきあいなので,感激もひとしおなのだ。この辺り,詳しくはここここなんかを読んでみてほしい。

しかも今回,いわゆるビールの輸入業者を通して酒販店などで販売されるのではなく,全国の西友で独占販売なのである。この流通形態もちょっと珍しい。

というわけで,近くの西友を早速チェックしてみた。


あるじゃないのよ,あるじゃないのよ。うれしいねぇ。

ちなみにこのビールたち,「国境なきビール」シリーズと名付けられていて,オーストラリアの原料とオーストラリアのブルワーによる監督のもとベルギーで生産され,瓶内に酵母を残した,いわゆるボトルコンディションの状態で出荷されているのである。海外から長旅で日本まで運ぶにはリーファーコンテナなどを使うことも多いが,こういう選択肢もあるわけだ。

それから驚くべきはこの価格。なんと税抜245円!革命的な安さ。しかも品質は折り紙つき。何といってもサンダーロードは,世界5大審査会の一つ,オーストラリアで開催されるAIBA (Australian International Beer Awards)で2014年と2015年に2年連続で Champion Medium Australian Brewery に輝いているのだ。また,このクラスのブルワリーとしては珍しく,本格的なラボを所有していて,厳格な品質管理を行なっている。それが245円!このコスパは半端ない。

さて,で,ビールの話だ。今回,日本デビューを飾ったのは,3つのスタイル。Pacific,Pale Ale,IPA である。


パシフィック(Pacific)は,オーストラリア独特のスタイル。フルーティな香りを持つオーストラリア産ホップGalaxyのいいサンプルになっている。鼻を近づけるとパッションフルーツや柑橘のような香りが広がる。

ペールエール(Pale Ale)は,もともとイギリス発祥のスタイルだが,ビアスタイル的には,これもオーストラリアン・ペールエールと呼ぶべき。フルーティかつほのかにスパイシーなホップアロマが特徴だが,麦芽の甘みもしっかりと感じられるバランスがとれたビールになっている。

IPA(India Pale Ale)は,さらにホップの苦味と香りを強めたバージョンだが,いわゆるアメリカ西海岸系のホップがゴリゴリ効いたIPAを飲み慣れた向きには,物足りなく感じるかもしれない。IPAと言えば,ホップの苦味も極めて強く,それとバランスを取るようにアルコール度数も5〜6%くらいあるのが普通。一方このビール,スタイルとしてはセッションIPAに相当し,度数は4.9%と低め。苦味もミディアムで飲み口も軽いので,ついついグラスを重ねてしまう,北海道弁で言うところの「飲まさる」IPAなのである。

そう,サンダーロードのビールの特徴は,何と言ってもドリンカビリティの高さ。バーで仲間と,あるいは家で家族と話に花を咲かせながら,グラスを重ねられるそんなビールで,食中酒としても楽しめる。パシフィックなんて,これからの季節,牡蠣と合わせると素晴らしいと思う。そう言う意味ではスーパーでの展開というのはかなり正しい戦略だったのかもしれない。夕飯の素材とビールを買って家庭でマリアージュを楽しむなんてことが普通にできるようになると,いいよねぇ。

さて,サンダーロードのブルワリーは,メルボルンの市内からトラム(No.1, 8)で20分くらいの絶好の位置にある。日本で輸入されたビールを楽しむのもいいけれど,気に入った方は,ぜひいつの日か本拠地を訪ねてみてほしい。レンガ作りの建物にキラキラ輝くタンクやパイプが並ぶ清潔感があってちょっと都会的なブルワリーを見学できることだろう。そして,上の3種以外のバラエティ豊かな,しかもできたてのフレッシュなビールたちをぜひ楽しんでほしい。エントランスではブルワリーのイメージにもなっている北欧神話の雷神トール(Thor)が出迎えてくれる。


日本からメルボルンへは成田からJet Starの直行便も飛んでいるので,夜間飛行で週末の弾丸ツアーなんてことも実は可能だったりする。それに今週の金曜日,12月16日からはカンタス航空の直行便も就航する。ますます身近になってきた。それだけ需要があるってことかな?

どうです?行きたくなったでしょ?

メルボルン発の「飲まさる」ビール,サンダーロード。ぜひお楽しみください。