2016年12月13日火曜日

上陸

アメリカのクラフトビールは日本中のどこに行ってもそれなりに手に入るようになったが,昨今はオーストラリアニュージーランドといった南半球の国々のビールも日本にいながらにして楽しめるようになった。たとえば,8 Wired とか,Holgate などといったブランドを手にとったことがある方もいるだろう。

そして,また一つ新しいブランドが日本上陸を果たした。

オーストラリアはメルボルンに拠点を置くサンダーロード・ブルーイング(Thunder Road Brewing)である。ここのビール,今年9月のビアフェス横浜でもお披露目されていたので,楽しんだ方もいるだろうが,とうとう手軽に入手できるようになった。

僕のブログを昔から読んでいる方は,何度か名前を聞いたことを覚えているかもしれないが,僕はブルワリーの立ち上げ以前から,もうかれこれ6年以上のおつきあいなので,感激もひとしおなのだ。この辺り,詳しくはここここなんかを読んでみてほしい。

しかも今回,いわゆるビールの輸入業者を通して酒販店などで販売されるのではなく,全国の西友で独占販売なのである。この流通形態もちょっと珍しい。

というわけで,近くの西友を早速チェックしてみた。


あるじゃないのよ,あるじゃないのよ。うれしいねぇ。

ちなみにこのビールたち,「国境なきビール」シリーズと名付けられていて,オーストラリアの原料とオーストラリアのブルワーによる監督のもとベルギーで生産され,瓶内に酵母を残した,いわゆるボトルコンディションの状態で出荷されているのである。海外から長旅で日本まで運ぶにはリーファーコンテナなどを使うことも多いが,こういう選択肢もあるわけだ。

それから驚くべきはこの価格。なんと税抜245円!革命的な安さ。しかも品質は折り紙つき。何といってもサンダーロードは,世界5大審査会の一つ,オーストラリアで開催されるAIBA (Australian International Beer Awards)で2014年と2015年に2年連続で Champion Medium Australian Brewery に輝いているのだ。また,このクラスのブルワリーとしては珍しく,本格的なラボを所有していて,厳格な品質管理を行なっている。それが245円!このコスパは半端ない。

さて,で,ビールの話だ。今回,日本デビューを飾ったのは,3つのスタイル。Pacific,Pale Ale,IPA である。


パシフィック(Pacific)は,オーストラリア独特のスタイル。フルーティな香りを持つオーストラリア産ホップGalaxyのいいサンプルになっている。鼻を近づけるとパッションフルーツや柑橘のような香りが広がる。

ペールエール(Pale Ale)は,もともとイギリス発祥のスタイルだが,ビアスタイル的には,これもオーストラリアン・ペールエールと呼ぶべき。フルーティかつほのかにスパイシーなホップアロマが特徴だが,麦芽の甘みもしっかりと感じられるバランスがとれたビールになっている。

IPA(India Pale Ale)は,さらにホップの苦味と香りを強めたバージョンだが,いわゆるアメリカ西海岸系のホップがゴリゴリ効いたIPAを飲み慣れた向きには,物足りなく感じるかもしれない。IPAと言えば,ホップの苦味も極めて強く,それとバランスを取るようにアルコール度数も5〜6%くらいあるのが普通。一方このビール,スタイルとしてはセッションIPAに相当し,度数は4.9%と低め。苦味もミディアムで飲み口も軽いので,ついついグラスを重ねてしまう,北海道弁で言うところの「飲まさる」IPAなのである。

そう,サンダーロードのビールの特徴は,何と言ってもドリンカビリティの高さ。バーで仲間と,あるいは家で家族と話に花を咲かせながら,グラスを重ねられるそんなビールで,食中酒としても楽しめる。パシフィックなんて,これからの季節,牡蠣と合わせると素晴らしいと思う。そう言う意味ではスーパーでの展開というのはかなり正しい戦略だったのかもしれない。夕飯の素材とビールを買って家庭でマリアージュを楽しむなんてことが普通にできるようになると,いいよねぇ。

さて,サンダーロードのブルワリーは,メルボルンの市内からトラム(No.1, 8)で20分くらいの絶好の位置にある。日本で輸入されたビールを楽しむのもいいけれど,気に入った方は,ぜひいつの日か本拠地を訪ねてみてほしい。レンガ作りの建物にキラキラ輝くタンクやパイプが並ぶ清潔感があってちょっと都会的なブルワリーを見学できることだろう。そして,上の3種以外のバラエティ豊かな,しかもできたてのフレッシュなビールたちをぜひ楽しんでほしい。エントランスではブルワリーのイメージにもなっている北欧神話の雷神トール(Thor)が出迎えてくれる。


日本からメルボルンへは成田からJet Starの直行便も飛んでいるので,夜間飛行で週末の弾丸ツアーなんてことも実は可能だったりする。それに今週の金曜日,12月16日からはカンタス航空の直行便も就航する。ますます身近になってきた。それだけ需要があるってことかな?

どうです?行きたくなったでしょ?

メルボルン発の「飲まさる」ビール,サンダーロード。ぜひお楽しみください。


2016年10月21日金曜日

土地勘

昨日,仕事で稲田堤駅のあたりに行ってきた。
目的は,この近辺の学習塾を回って学校説明を行なうこと。いわゆる営業活動。

なぜこの辺りに僕がきたかというと,実は1997年から2002年までの5年間,この辺りに住んでいたので土地勘があるし,久々に街の様子を見てみようと思ったことがある。

駅近辺の6ヶ所の学習塾を回って任務を果たした後,住んでいた辺りを放浪してみた。

当時は勤務先が調布にあったので,川を渡ってすぐだったし,ここは都心へ出るのも,川崎や横浜へ出るのも比較的楽だったので,なかなか便利だった。街もこじんまりしていて古い商店街なんかもあり,それなりに住みやすかった。住んでいたのは木造2階建のアパート。土壁でちょっと湿気が多かったのが玉にキズ。当時ですでに結構古い建物だったはず。

もう取り壊しとかになってるんじゃないかと思って恐る恐る行ってみたら,あるじゃないのよ,まだ!…ってことは大家さんまだ元気なのかな?


ということで,仕事にかこつけて懐かしの我が家訪問と相成った。

商店街は少し新しい店が増えたけれども,昔からの店も結構残っていてなんかホッとしたなぁ。


2016年9月12日月曜日

磁性流体

調布文化会館で行なわれていた電通大の児玉幸子さんの展覧会

磁性流体彫刻とメディアアートのデザイン展

というのを見てきた。


実は彼女はウチの嫁の学生時代からの友人。まぁ,言ったら僕の北大の後輩という位置付けにもなる。北大を出た後,筑波で芸術学の博士を取って,現在電通大の准教授。確か,僕が電通大にいた時分に学位を取って電通大に来たんじゃなかったっけかな?その意味では元同僚とも言える。分野は違うけれども。

2008年だったか,僕がウチのガッコで女子中学生向けの公開講座「テクノガールズ」をやった時にも,ゲストとして来てもらい,加速度で色が変わるデジタルボールを使って参加者と遊んでもらう,なんて取り組みもやったことがある。

彼女が恐らく15年以上も取り組んでいるプロジェクトが今回の目玉でもある磁性流体アートで,僕もこれまでに何度か見せていただいたことがある。

磁性流体は簡単に言ったら砂鉄の液体版みたいなもの。砂鉄は固体の粒が磁界に反応するけれども,磁性流体は液体(コロイド溶液)で,磁石や砂鉄のように磁界に反応するという代物。HDDの防塵シールなどとしても実用化されている。

彼女の仕事はこれをアートとして表現しようというもの。例えば,器に磁性流体を入れ,器の上下などに電磁石を配置して磁界を制御すると,それに反応して液体がトゲトゲになって飛び出すなど,時間とともにいろいろな形状に姿を変える。テクスチャとしては,エナメルみたいな艶のある黒い液体で,これが時間とともに滑らかに姿かたちを変えていく様子は生き物を見ているようで,ずっと眺めていても全然飽きない。個人的には,バビル二世のロデムみたいだなぁ,なんて思ったり。

音楽や照明と連動する作品もあったりして,無機質の液体であるのに,意志を持った新生物のようにゆったりと動く様は美しさすら感じるし,見ているこちらのイマジネーションも刺激してくれる。

今回の展覧会のフライヤーはずいぶん前に送ってもらっていたのだが,なんせ出張だなんだで東京にいない日々が続いていたりしてなかなか時間がとれなかったので,ここしばらくの唯一の休日に行ってきたというわけ。

展覧会は調布駅前の調布市化会館たづくりホール展示室で9月19日まで
もう残すところ一週間なので,興味ある人は是非。

詳細は調布市文化・コミュニティ振興財団のウェブサイトからもご覧いただけます。


2016年9月8日木曜日

プレゼンスキル

昨日,PSUで行なわれた工学系の学生によるスピーキングコンテストというのを見てきた。


前に書いたように,PSUは英語でのプレゼンテーションスキルに関する研究や教育が非常に進んでいる。なんと,先日お会いしたMichael Alley先生からも,著書 The Craft of Scientific Presentations を献本していただけた。


僕らが学生の頃,研究発表などのプレゼンを行う際には,1枚のスライドにどのくらいの情報量を詰め込めるか,というのが一つのテーマだった。オーディエンスは書いてあることのすべてを理解しなくても,知りたいことが常に投影されている Self-contained なものが良いと考えられていたのだ。で,僕も学生には,言いたいことは全部書いておくといいよ,などと指導してきた。

ところが,ここで行なわれているプレゼン指導や上の本では,かなり違ったアプローチが推奨されている。例えば,
  • 1枚のスライドで伝える重要な一つのメッセージが明確であること
  • 箇条書きは使わない
  • 文字を極力減らし,写真や図表で重要なメッセージを伝えること
  • メモを見たり話す内容を暗唱するのではなく,オーディエンスを信用させられるように自信を持って講演すること
などといった感じだ。まぁ,最後は当たり前かな?

言われてみれば,Imagine Cup の時に学生たちが作ったスライドがこれに近かったし(プレゼンは今でもここで見られる),世界大会前の合宿でもそういう指導がなされたりした。TEDなんかのスピーチで使われているのがこれに近いよね。

しかし,これねぇ。言うのとやるのとは大違い。結構大変。スライド作るためにそれなりのイマジネーションも要求される。実は僕も最近はツカミのスライドだけはビジュアル重視にしてみたりとかしているんだが,全部通しで,となるとちょっと気が遠くなる。

もちろん,分野的に不向きな場合もある。理論系でみんなで証明追いましょう,なんて時にポンチ絵ばっかり見せられてもねぇ。ただ,工学系,技術開発系なんかのプレゼンでは,極力文字を減らして図表だけ,できなくもないよねぇ。ぜひ,日本語でも実践した欲しいもんだ。高専プロコンのプレゼンなんかはコレでいけるんじゃないかな?

チャレンジャー,いませんか? > 学生諸君

2016年9月7日水曜日

Penn State

土曜日から米国はペンシルベニア州のステート・カレッジという街に来ている。


目的は本業の出張で,ペンシルベニア州立大(PSU)を訪問して,研究打ち合わせとこちらの英語プレゼン関係の授業見学など。


なんで,僕が英語の授業見学?と思う方もいるだろう。
ただ,僕はウチの英語のホリ先生が代表者の科研費プロジェクトで研究分担者になっていて,英語プレゼン関係の研究テーマも持っているのさ。

で,ちょうどそのホリ先生が在外研究でPSUにいるもんで,そのプロジェクトの経費を活用させてもらって,打ち合わせやら見学やらさせてもらおうという,そういう趣旨なわけ。彼女の今の研究課題は今年が最終年度なので,来年以降の継続のためにこの秋には科研の申請を出さなくちゃいけない。その作戦会議的なこともこっちで行なったりしたのだ。

実は PSU は英語によるコミュニケーションスキルとかプレゼンテーションスキルとかに関する研究や教育では世界のトップランナーらしい。実際に,日本語訳も出ている The Craft of Scientific Writing とか The Craft of Scientific Presentations などの著書で知られる Michael Alley 先生と会って話を聞く機会なんかもあり,なかなか貴重な時間を持てた。

この辺,詳しくはまた別の機会に書くとしよう。

で,せっかくアメリカに来たもんで,副業の方もしっかり取り組んでいたり…


写真は,ダウンタウンからバスで10分くらいのところにある Happy Valley Brewing。ここも含めて,特にビールはそうでもないホリ先生を連れ出して2ヶ所もブルワリーを廻ってしまった。ホリ先生,お付き合いいただきありがとうございます。どうも,すいませんね (^^;;;
こっちについても,また別の機会に詳しく書くかね?


2016年9月1日木曜日

15 years

今日9月1日で,僕が今のガッコに着任してちょうど15年となりました。

早いもんだね。

いろんなことがあったけどね。

そして,あと15年経つと定年だよ…

ううむ,早いもんだね。

どんなことがあるのかねぇ。


2016年8月28日日曜日

続・かくも長き不在

去年の今頃,「かくも長き不在」と題された投稿をした。その時は,ここの投稿を2ヶ月近くサボった,という話だったのだが,今回は別の話。僕が物理的にいないっちゅうヤツです。

まぁ,毎年8月から9月は出張などが続いて日程調整が難しかったりするのだが,今年は特に酷い。8月17日以降,9月までの僕の足取りをまとめてみる。

8/17〜8/22: 出張(メルボルン大)
8/23: 出勤(小学生理科講座)
8/24〜8/27: 出張(北大・北海学園大)
8/28: 出勤(学校説明会)
8/29・8/30:休暇(休日出勤の振替など)
8/31〜9/2: 出勤
9/3〜9/10: 出張(ペンシルベニア州立大)
9/11: 休暇
9/12〜9/14: 出張(3年生の研修旅行で京都)
9/15: 都内出張
9/15〜9/17: International Beer Cup 2016 で審査
9/17〜9/19: ビアフェス横浜2016でボランティア
9/20〜9/23: 出張(北大)
9/24・9/25: 休暇
9/26: 出勤(後期授業開始)

という感じ。8/17から9/25までの40日間で出勤はたったの5日
出張で不在が25日。土日も含めたオフは5日
かなりのもんですね。

体調管理には気をつけないばならない。

業務連絡。
この間,僕のハンコが必要な場合は事前にメール等で連絡をください。
対応策を考えます。

ただね。この40日の間に自宅に泊まるのは15泊もあるよ。
ま,それが多いか少ないかは議論の分かれるところだが…

授業の準備も今のうちにしとかないと間に合わないな…

2016年8月27日土曜日

立場の相違

昨日も書いたが,今回の札幌出張の主たる目的は SCIS&ISIS 2016 という国際会議に出席することであった。

プログラムを見るとわかるのだが,この会議,オーガナイズド・セッションが36件一般セッションが12件。ということで,75%がオーガナイズド・セッション。僕が担当したのも自分で構成したオーガナイズド・セッションだった。

オーガナイズド・セッションというのは,オーガナイザがトピックを決めて,論文を募集し,ある程度オーガナイザの責任の下で論文の採択やセッションの構成を決定できるというもの。会議の主催者側からすると,ある程度参加者数や投稿論文数の見込みが立つので,運営上,いろいろと便利なことも多い。最近,オーガナイズド・セッションを採用する会議も増えているし,今回のようにオーガナイズド・セッション偏重のものも少なくない。

ただ,参加する側からすると必ずしもハッピーなことばかりではない

特に今回の僕の場合,会議のスコープからすると若干的を外しているんだが,分野外の人にも自分たちの分野の最新の動向などを紹介できるという意味も込めてオーガナイザを引き受けさせてもらった。だが,フタを開けてみると,いわゆる分野外の聴講者はあまりおらず,会場には関係者の方が多いという有様。必然的に質問なども少なく,自分からの情報発信はできたが,十分な議論ができて,多くの新しい知見を持ち帰る,という感じには残念ながらならなかった。

もちろん,そのこと自体は主催者側の問題じゃなく,参加者がもっといろんな話を聞きに行けよって話だし,僕自身も自分の関心から遠いセッションには足を向けなかったりするから,お互い様だったりする。

ちなみに前回記した僕らがやっているIWSDAというワークショップは常に1つのセッションしかないため,その場にいない ≒ サボっている,がほぼ成り立つ(微妙に等号とも言い切れないわけだが)。だから,それなりに密度の濃い議論ができるよね,というのがウリでもあるわけだ。ただ,会議の規模が大きくなったら,並列セッションを組むのは致し方ないし,会議の安定した運営のために参加者を集めようと思ったら,オーガナイズド・セッションを組むのは一つの解決法ではあるだろう。

なかなか難しいよね。

こういうのってどんな分野でも一緒ですよね。きっと。

2016年8月26日金曜日

視察

今,出張で札幌にいます。今月2度目の札幌です。ええ。

今回の主な目的は国際会議 SCIS&ISIS 2016 に出席すること。僕の出番は土曜日の午前中に僕が組んだオーガナイズドセッション「OS-23: Multimedia Revolution」があるので,その座長と,自分自身も発表するためです。

今回はもう一つ目的があって,そのために,昨日北大を訪れていくつか打合せをしてきました。


実は来年の9月に北大で国際会議を実施する計画を立てていて,その会場の視察と実際の会議運営に関する打合せを行ないました。この国際会議は,

信号設計とその通信への応用に関する国際ワークショップ
(International Workshop on Signal Design and Its Applications in Communications)

というものです。略称 IWSDA'17。2年に一度,奇数年に行なわれている会議で前回 IWSDA'15 はインドのバンガロール,その前 IWSDA'13 は東京で開催されており,来年が8回目になります。僕は前回,前々回ともプログラム委員長を務めていましたが,何の因果か,来年は実行委員長だそうですよ。他人事みたいですけど。

というわけで,視察してきました。会場候補は北大のフロンティア応用化学研究棟というところ。ここの2階にはノーベル賞受賞者の鈴木章先生を記念した鈴木章ホールがあります。が,僕らのワークショップは参加者が100人にいかないくらいの小さなものなので,ホールは借りず,1階のセミナー室を借りることにしました。


ちなみに1階でも鈴木先生のお顔は拝めます


利用料金も値上がりが予定されているとはいうものの,想定よりも安価で借りられるようだったし,空港や駅からのアクセスもいいし,会場としては良さげです。食事なども大学内の施設が利用出来そうなので,その辺りも確認したりできました。

これから予算立てたり,論文募集案内を作ったり,学会等への協賛依頼を行なったりといろいろ事務仕事が増えます。関係者のみなさんにはいろいろお手数をおかけすると思います。

ということで,この分野に関係の皆様には是非,来年札幌にお越しいただきたいと思っています。

来年の9月24日から28日まで,IWSDA'17 in Sapporo。是非カレンダーにご登録ください。
登録はココから↓



2016年8月25日木曜日

地域貢献

月曜日にオーストラリア出張から帰り,一昨日,火曜日は学校で小学生向けの科学講座を実施しました。

ウチのガッコは,小・中学生向けの公開講座コンテンツをウェブで公開(こちらを参照)している。地域の小学校や中学校,教育委員会などがメニューから講座内容を選択し,依頼に応じて実施するようなしくみになっている。学校としては地域貢献の一環でもある。

僕も「暗号のしくみを知ろう」という講座を提供していて,依頼があればできる限り実施するような感じになっているというわけ。

一昨日は,八王子市小学校科学教育センターの理科講座ということで,八王子市内の小学生100人弱が参加。4つのグループに分かれて,1時間ずつ4つの講座を順番に廻るというものだった。ということはこちらは同じ内容の講座を午前2回,午後2回の計4回やらなくちゃいけない。いやぁ,ハードだったねぇ。

そもそも,「暗号のしくみを知ろう」という講座は,もうかれこれ10年弱やっているものなのだが,紙筒を用いてひらがなベースでシーザー暗号ヴィジュネル式の暗号を作ったり解読したりする暗号器を作るというもの。それまで僕の所属する情報工学科では,コンピュータを使った実習とかプログラミングの演習などは実施してきたが,参加した子供が製作物をお土産として持って帰れないなどという話になって,無理くり作り上げたコンテンツだったりする。

いわゆる実用的な暗号ではなく,子供でも手で計算して作れるくらいのものを使っているし,紙工作で作って使い方をマスターすると計算の必要がなく暗号化ができるということで,それなりに評判がいいらしい。


普段は,休憩をはさんで2時間くらいのコースで,簡単な暗号の例を実体験した後,紙工作を行なって,自分で作った暗号器で暗号化と解読の方法をマスターした後,グループに分かれて伝言ゲーム的なことをやって遊んだりしている。

今回は55分間という短縮バージョンなので,内容を圧縮して実施した。工作と使い方のマスターに重点を置いて時間配分したけれど,子供によって作業のスピードにかなりの差があるので,なかなか難しかったね。それに1日4講座というのは子供にもかなりの負担だったみたいで,4回目の最後の講座はかなり集中力を欠いている子供もいたなぁ。まぁ,これは致し方なし。

終わった後に小学校の先生と話したところ,暗号みたいなコンテンツは子供にも人気があるし,パズル感覚で取り組めていいとのこと。実際,小学生向けの本なんかでも暗号が絡んだミステリーや冒険物があったりするもんね。それに実際に講座を実施すると,子供と一緒にやってきた先生方やお父さんなんかの食いつきがすごくいい。ということで,今は公開講座なら成人向けでもやりますよ,という宣伝をしている。あ,成人向けといっても内容は子供と同じですが(勘違いするなよ…

まぁ,評判がいいことは悪いことではないんだが,今回の講座を実施している間に,他の小学校から出前授業の依頼が入ってきたりした。うーむ,こっちとしてはかなり負担もかかるのよね。その上,紙筒も特注だったりするので,それなりに材料費がかかる。本当はラップの芯とかトイレットペーパーの芯とかを使うこともできるのだが,メーカーによって太さが均一じゃないので,使えないというデメリットもある。この辺を考慮して,今後は紙筒を使わない方式にできないかと,今,改良を試みている。

ちなみに,紙筒を使うと,エニグマなんかを復元できたりもするんだよね。全然小学生向けじゃないけど。成人向けコンテンツとして検討するか…(だから,勘違いするなよ!

だけどこれ,紙工作教材として製品化したら売れないかねぇ。講座はやりづらくなるけど。学校の経営上はどっちが得策なんだろ?ご検討ください > 校長,副校長各位


2016年8月18日木曜日

ひと夏の経験

今日から出張でメルボルンに来ている。
今年の3月以来5ヶ月ぶりの帰省。

今回のミッションは,ウチの学生2名がメルボルン大で4週間インターンシップを行なうので,その立ち上げに立ち会うことと,実習内容や研究内容の打合せ,住環境などの安全確認をすることだ。

ところが,学生2名はまだ来ていない
本当は2人は昨日の夜にこちらについているはずだったのだが,乗るはずだった飛行機が機材の関係で欠航になって代替便で一日遅れで今晩着くらしい。仕方がないので,今晩空港までお迎えに上がるつもり。

日本国内でのトラブルとはいえ,これから4週間の実習をスタートさせる上では,いい感じのイニシエーションを受けたのではないだろうか?こういうのが積み重なって経験値が高まる。多分,こちらに来てからもプチトラブルはいろいろあるだろうから,帰国した彼らが様々な意味でいい経験を積んでくれることを祈っている。

彼らの実習は,僕の共同研究者のところに滞在して,スペクトル拡散系列の生成とか,それらを使った電子透かしに関するライブラリを組み上げること。これができるとウチの研究室でもこちらの研究室でも新しい学生が来た時に,すぐに開発やシミュレーションを始めることができるようになる。2人がかりで丸々4週間かけるんだからそれなりのものができるよね?と軽いプレッシャーをかけたり…

というわけで,本当は今日,彼らのアパートへのチェックインに立ち会ったり,街の中を案内するつもりだったのだが,何もすることがなくなってしまった

仕方がないから,放浪しよう (^^)v

ウチの学校では,こういう風に,夏,学生たち(本科4年生と専攻科1年生)は企業や大学に実習に出かける。海外に行く学生は国内ではできないいろいろな経験を積むことだろう。ただ,アレだな。ウチの2人の学生たちは夏じゃなくて,厳密には「ひと冬の経験」だね。

僕のところには専攻科1年の学生が3人いて,2人がメルボルン,1人がフィンランドと全員が海外での実習に臨む。帰国後,彼らの珍道中を聞くのが今から楽しみだ。まだ,始まってもいないけど。


2016年8月15日月曜日

R.I.P.

今朝,悲しいニュースが舞い込んで来ました。
クラフトビアアソシエーション(日本地ビール協会)の小田良司会長が69歳で逝去いたしました

思えば,クラフトビールが日本で解禁になった1994年当時,学生だった僕はすでにビールに関心を持っていて,翌95年以降,学会だなんだで全国さまざまな土地に行っては,その土地の地ビールを楽しんでいたりしました。今世紀になった頃から,恵比寿で開催されていた協会主催のビアフェス東京なんかにお客さんとして参加していたし,ビアテイスターやビアジャッジなどという資格にも関心を持ちました。ただ,結構出費もかかるので,40代になったらジャッジ取得を目的としてテイスターの資格を取る,という約束をヨメとも交わしていたわけです。

で,40歳になった2008年,念願のビアテイスターの資格を取得し,この年の後半くらいから,ボランティアとしてビアフェスや協会が主催する審査会の手伝いなどもさせていただくようになりました。その後,ビアジャッジにも認定していただき,国内外の審査会で審査に加わらせていただくことができました(ジャッジ認定試験の直前,会長に「頑張ってください」と肩をつかまれたのはかなりのプレッシャーだったけど…)。最初に海外での審査を経験させていただいたのは,2012年のシンガポールでしたが,この時もきっかけは小田会長からの1本の電話でした。

そう,会長からの重要な連絡は多くの場合,携帯への電話でした。

そんな僕の人生が大きく舵を切ったのは,翌2013年の9月25日のことでした。出張で沖縄にいた僕の元に小田会長から1本のメールが入りました。その日は何故か電話ではなく,メールでした(だから日付まではっきりと記録が残っているというわけ)。メールにはこう書かれていました。

小嶋さん
お疲れさまです。

ビアテイスターセミナーの講師をしませんか??

短いメールでしたが,僕はすぐに返事をして,田村功先生が講師を務めるセミナーを二度ほど聞かせていただいた後,その年の12月21日に横浜でビアテイスターの講師を初めて務めさせていただきました。それ以降,都合の合う時は,東京または横浜で講師をさせていただいていますし,最近ではビアジャッジセミナーの講師まで担当させていただいています。

もちろん,僕の本当の仕事はビールとは一切関係がないし,セミナーの講師も仕事ではなく,実は自分にとってもある種のトレーニングだと思ってやらせていただいているところが大きいです。実際,毎回講師として参加している自分もそれなりに新しいことに気づいたり,自分の能力を確かめたりすることができます。ある意味,究極のOJTということもできると感じています。

僕の人生がこれだけ大きく変わったのも,僕にこれだけのチャンスを与えてくれたのもすべて小田会長の一言があったからです。そして小田会長のおかげでたくさんの人に出会えたし,その人のつながりがかけがえのない財産になっています。

あのメールだけではありません。小田会長から直接いただいた言葉,電話での長い会話,思い出すといろいろなことが脳裏に浮かびます。

最後にお会いしたのは,今年の4月,横浜で行なわれたAsia Beer Cup 2016(ABC2016)のバックヤードでのことでした。僕は審査委員長の一人として審査は行なわず,審査がスムーズに進むよう調整するなど,審査会場の裏に詰めていました。小田会長は闘病中で弱々しくは見えましたが,会場までお越しになり,我々とも言葉を交わしてくださいました。会長が僕のことを手招きで呼ぶので,近づいていくと,ABC2016のジャッジ紹介用のリーフレットを指差し,僕に話しかけました。

  会長:小嶋さん,ペン,あるか?
  ボク:これ,使ってください。
  会長:(少し書き込んでから)これな,ここんとこ,このままじゃまずいからな,
     次から直しといて。

と訂正の指示。そう,会長はいつでも真剣でした。日本のクラフトビールをどう支えていくか,どう変えていくか,いつも真剣だったのだと思います。その真剣さやまっすぐさが,時に衝突を生むこともあったと思いますが,そのまっすぐな思いが,今の日本のクラフトビールシーンを支える大きな原動力になったことを疑うことはできないと思います。しかし,それにしても,次回,9月に行なわれる審査会で上のように指示された訂正を活かす前に会長を失うことになろうとは,この時僕は微塵も思っていませんでした。

一人の人の存在が,我々の暮らしを大きく変えることがある。
そして一人の人の死が,我々の暮らしを大きく変えることもある。
それでも地球は回るし,時は過ぎ行く。僕らの生活は続いていく。
今日も明日も,日本中で,いや世界中で,多くの人が昨日までと同じようにクラフトビールを楽しむことだと思います。

残された僕らにできることは何か?僕らが向かうべきところはどこか?
大きな存在を失くしても,僕らがなすべきことは,これまでと同じように生活し,これまでと同じように仲間と力を合わせて,これまでと同じようになすべきことをなすことだと思っています。僕らには会長のおかげで出会えたたくさんの仲間がいるし,かけがえのない人と人とのネットワークがある

僕らは力を合わせて,小田会長が生きていたら続けていたであろうことを続けていこう。
時には僕ら自身のエッセンスも加えながら,一歩一歩前へ進んでいこう。

その先に,僕らを含む世界の人たちがクラフトビールを楽しむことができる世界があるはずだ。そこに向かって歩いていこう。

小田会長,会長が成し遂げたかったこと,目指したことには,我々が力を合わせてチャレンジしようと思います。じれったくて,ツッコミを入れたいとき,ダメ出しをしたいときは,いつもと同じように携帯に電話してください。

9月には横浜でInternational Beer Cup 2016が開催されます。日本中,世界中からブルワーやジャッジが集まります。物理的に小田会長の姿が見えなくても,我々はこれまでと同じように真剣にビールと向かい合い,さらなる国際交流を深めたいと思います。

日本の,アジアの,そして世界のクラフトビアシーンがさらなる発展を遂げることを祈って。

Here's to our memories of Mr. Ryouji Oda. 

献杯。

さて,今宵は何を呑もうか?


2016年8月12日金曜日

自己研鑽

昨日は,札幌のモルトヘッズビアジャッジング勉強会を行ないました。

僕がビアジャッジの資格を取る前とか,その前後あたりは,当時,洗足にあったブルーパブ・パンゲアで行なわれていた勉強会に参加させてもらっていました。こういう勉強会はもっと以前にも行なわれていたらしいのだけれども,パンゲアが閉店してからは,なかなか機会がなく,結局,僕が発起人のような形になってビアジャッジング勉強会東京として神楽坂のラ・カシェットをお借りして始めたのが一昨年の7月でした。

それから約2年,この間に東京・横浜で9回の勉強会を開催してきました。本当は毎月は厳しくても3か月に2回くらいのペースを目指していましたが,実際はその半分程度に留まっています。すみません。で,2年前から毎年,夏の僕の帰省に合わせて,札幌でも勉強会を実施しています。

この勉強会は,本来はジャッジの資格を持っている方々がジャッジングのスキルやテイスティングの感覚,実際の審査に即したディスカッションやコミュニケーションの能力を磨くことを目的にしています。ただ,場合によっては,これから資格取得を目指す方や,ビアバーや小売店・輸入業などでビール業界に関わっている方々,それに単にビールをもっと深く知りたいという方までターゲットを広げて開催することもあるというわけです。

昨日は,僕と店主の坂巻さんを含め,10名が参加。うちジャッジ資格保有者は3名でした。

ということで,普段のジャッジングスキル向上というのとは一味違い,テイスティングやジャッジングの方法から解説し,実際の審査会などにおける審査の様子を実体験してみる,というような内容になりました。

ちなみに,今回ジャッジしたビアスタイルと使用した銘柄は,以下の通り。
  1. ジャーマンスタイル・メルツェン(1銘柄)
    • ススキノビール・メルツェン
  2. ドルトムンダー/ヨーロピアンスタイル・エクスポート(2銘柄)
    • サッポロビール・ヱビスビール
    • ベアレン醸造所・クラシック
  3. アメリカンスタイル・インディア・ペールエール(2銘柄)
    • ノースアイランドビール・インディア・ペールエール
    • C.E. Shannon Centennial BIT-ter
  4. ロブスト・ポーター(3銘柄)
    • フラーズ・ロンドンポーター
    • ヤッホーブルーイング・東京ブラック
    • 網走ビール・監極の黒

よくご存知の方は気づくかもしれないけれど,実は今回用意したお題は結構,ハードルが高い。それに実はスタイル違いのものをわざと混ぜていたりもします。これは,もともと自分でも確かめたい銘柄や敢えてトレーニングしてみたいスタイルを選ぶこともあるからなんだけど,初心者の方には厳しいものもあったかもしれない。準備段階では,僕はどういう方が参加するか知らなかったからねぇ (^^;;;;

でも,終わった後皆さん,楽しかったと言っていただけて良かったと思います。

それと上の銘柄の中には見慣れないものが一つ含まれていると思うけれど,4月30日にクロード・シャノンの生誕100年を記念して仕込んだビール(詳しくはこちら)が手元に残っていたので,これを今回使ってみました。自分で仕込んだからある程度何が問題かもわかっていたけれど,参加者の皆さんからも素直な感想やコメントをいただけて,面白かったね。

さて,この勉強会は東京・横浜を中心にもう少し頻度を上げて(でも決して無理はせずに)続けていこうと思います。時にはブルワーの方をゲストに招いて実施することもあります。これまで城山ブルワリーの倉掛さんや,伊勢角屋麦酒の鈴木さんなどに参加していただきました。ジャッジの方,生産者の方,機会があれば是非ご参加ください。そして一般の方にもお声がけする場合は,本気の審査の現場を是非覗いていただければと思います。

さて,次はいつになるのかな?


2016年5月4日水曜日

自己流レシピ0009: ニラチヂミ


ニラを大量消費するにはこれが一番手軽で美味いと思う。
卵を使わず,表面カリッと,中はモチモチ。
片栗粉由来のモチモチ感と野菜のシャキシャキ感が楽しめる。
そして作り方はちょー簡単。
言うこと聞いていれば,間違いなし。

材料(2枚分):
 ニラ: 1束
 玉ねぎ: 1/2個
 小麦粉: 120g(大体大さじ1が10gくらい)
 片栗粉: 60g
 粉末鶏ガラスープ: 小さじ2
 塩: 少々
 水: 1カップ(200cc)
 ごま油: 大さじ2弱

手順:
1. ニラは4〜5センチの長さに切り,玉ねぎは2〜3mm幅にスライスする。

 

2. 小麦粉,片栗粉,粉末鶏ガラスープの素,塩,水をよく混ぜる。
 (写真左は水を加える前,右は水を加えて混ぜた後)


3. 野菜を加えてよく混ぜる。
 野菜多めなので,野菜の間に生地が混じりこむ感じになるのが正解。


4. フライパンにごま油大さじ1弱を薄く引き,3. の半分量を薄くのばす。

5. まず,片面を3分焼き,ひっくり返してさらに3分。
 その後もう一度ひっくり返して1分焼く。
 2回目の3分の時と最後の1分の時はフライ返しなどで生地を押し付けるようにしても可。


6. 適当な大きさに切り分けて器に盛る。
 (トップの写真は2枚分相当)

7. 以上の要領で2枚焼く。

8. 適当なタレをつけて食べる。ギョウザのタレ的なものでもいいが,
 個人的には酢とコチュジャンを混ぜたものが好み。

手順5. で半分量ずつ焼いていくが,だいたい2枚目の方が大きめになる傾向あり。
また,ボウルの下に生地がたまっていたりするので,2枚目の方が粉が多めに
なる傾向もある。その辺考えて,1枚目で多めにボウルの底の生地をすくい上げると
うまく行く。

キムチを少し混ぜてアレンジするのもあり。
この場合,生地が水っぽくならないように,水気を切って生地に混ぜるか,
水との配合比を計算するとうまく行く。


合わせるビール: イングリッシュ・ペールエール,オーディナリー・ビター,
    ジャーマン・ピルスナー,ボヘミアン・ピルスナー,
    ミュンヒナー・ヘレス,ケルシュ,セゾン,フルーツビール

2016年4月5日火曜日

違和感


今日はウチの学校の入学式だった。
新入生のみなさんは夢や希望と不安がないまぜになった心境で今日の日を迎えたことと思う。

そんな晴れの日ではあるのだが,沈黙したままではいられなかったので,以下,率直に感じたことを書く。もし,新入生や保護者の方で不快に思う方がいたら申し訳なく思うが,絶対に看過してはいけないことと感じるため,あえて発言することをお許しいただきたい。

話は何かというと,入学式冒頭,新入生入場の際の音楽が「軍艦行進曲」だったのだ。

正直なところ,開いた口が塞がらなかった。

なぜ,この曲でなければならなかったのか?
行進曲であるところまでは問題ないだろう。しかし,数多ある曲の中から,この1曲を選んだ意図はどこにあったのか?誰の判断だったのか?

ウチの学校が単にトチ狂っただけなのか?
あるいは,国から何らかの指導が入ったのか?
はたまた,全国的な風潮なのか?

おそらく臨席した保護者の方々の中にも複雑な思いを持たれた方は多いことと思う。
学生や保護者の中には,様々な思想や背景を持った方がいらっしゃるだろう。
学校として,なぜそこに配慮をした選曲がなされなかったのだろうか?

今日は編入学する留学生,しかもアジア諸国からの留学生も出席している。
そのような学生に対しても,なぜ繊細な配慮がなされなかったのだろう?


実は,同じようなことを最近他でも体験した。


先月,上の娘が小学校を卒業したのだが,その卒業式でも入場の際の音楽に違和感を感じたのだ。その時,子供達の入場とともに流れたのは讃美歌312番,「いつくしみ深き」として知られる曲である。結婚式なんかでもよく使われるからご存知の方も多いはず。

個人的には身近にキリスト者もいるので,今日ほどの違和感ではなかったが,しかし,その場にいた方の中には,様々な宗教観や思想を持った方がいたはずである。そこへの配慮はなぜなかったのだろうか?


例えば,我々が推薦入試などで受験生の面接をする際,個人的思想や宗教観,家族の出自などに関する質問は絶対にNGである。この国ではあまり敏感になれないかもしれないが,肌の色や目の色だって非常に繊細に取り扱われるべき情報だ。

それと同じような配慮がなぜなされないのだろうか?

このような静かな鈍感が蔓延すること,同時多発的にこのような出来事に出くわすことを,とにかくそら恐ろしく感じるのである。

僕らはもっといろいろなことに敏感にならなくてはならない。
いろいろなことに気を配らなくてはならない。

誤解のないように言っておくが,僕はここで音楽そのものに異を唱えているわけではない。音楽に罪はなく,その使われ方が問題なのである。そしてその音楽を配慮なく使用するその行為,さらにはその裏にある見えざる意図静かなる恐怖を覚えるだけである。

僕の言っていることは間違っているだろうか?


.......うん,言いたいことは,まぁ,だいたい書いた。
あとはこれを読んだ人たちがどう感じるかだ。


何はともあれ,新入生のみなさん,ご入学おめでとうございます

みなさんがこれから楽しく充実した学生生活を送り,力を十分に発揮してさまざまな場面で活躍できるよう,僕たちは全力でサポートするつもりです。

仲良くやろうぜ!


2016年2月16日火曜日

Shannon Centennial Beer Project メンバー募集

今年の4月30日は情報理論の父・Claude E. Shannon の生誕100周年に当たります。情報理論とクラフトビールの両方に足を突っ込んでいる身として,これを記念してシャノンまたは情報理論にちなんだオリジナルレシピのビールを作るプロジェクト

C. E. Shannon Centennial Beer プロジェクト

を立ち上げようと考えました。

現時点で下記のような計画を立てています。

プロジェクトの趣旨にご賛同いただき,オリジナルビールのデザインと仕込みに加わって
くださる方を若干名,募集します。
  • 醸造するビアスタイル:2〜3種類ほどを予定
  • BOPは木内酒造さんの手作りビール工房での醸造を検討
  • 費用:5,000円程度+交通費を予定(これで完成したビール6本をお分けします)
  • 醸造量:プロジェクトメンバーの人数による

今後のスケジュールは以下の通りです。

   2月21日(日):メンバー募集〆切
   2月下旬〜3月上旬:ビールのレシピ設計
   3月中旬以降:現地にてビール仕込み
   4月下旬:完成
   4/30:都内でメンバーによる試飲会

できれば情報理論に詳しい方とクラフトビールに興味がある方にバランス良くメンバーに入っていただきたいと思いますので,ご連絡いただいた後,私の方で検討させていただき,プロジェクトメンバーとして加わっていただくかどうかお返事をさせていただきます。ご了承ください。

情報理論は知らないけれどクラフトビールが好きという方,あるいは,ビールのことはよくわからないけれど,シャノン生誕100周年ということなら是非参加したいという方,にも是非ご参加いただければと思います。

参加希望の方は3月20日〜3月31日の間で仕込みに参加可能な日を明記の上,小嶋までfacebookまたは電子メールにて直接メッセージをお寄せください。

募集〆切は今週の日曜日,2月21日までとさせていただきます。
短くて申し訳ありませんが,プロジェクトを確実かつ円滑に進める上のことですのでご了承ください。

2月22日付でプロジェクト参加の可否をお返事させていただきます。

また,ご質問やご相談がある方は,ここにコメントをいただくか,あるいは直接私までご連絡ください。

歴史的な日を祝いつつ,クラフトビール好きな方に情報理論のことを知っていただく,また情報理論にお詳しい方にクラフトビールを知っていただく良い機会にもなると思います。

多くの方のご参加をお待ちしております。

2016年2月4日木曜日

DANGER ZONE

ウチの「つん」(小4の息子)は,風呂とかトイレに入ると,大声で歌を歌う。
歌うだけじゃなくて,時々,寸劇が始まったりもする。
しばしば,こっちが思いもよらない出し物を繰り出してくる。

昨夜も,風呂に入ったと思ったら,なにやら大声で歌い出した。
なに歌ってんのかなぁ〜と思って,耳をすませてみると。。。

♪ はぁ〜いうえぇ〜いとぅ〜ざぁでんじゃぁぞ〜ん ♬

???けにーろぎんす?

とっぷがん???

あの頃は,トム・クルーズも若かったよなぁ…

っつうか,なぜにデンジャー・ゾーン??

てか,なんで歌えんの?
我が家には音源ないはずだし,テレビでトップガンやってたわけでもない。
どこで覚えた??

で,風呂上がりを捕まえて聞いてみると,

「学校で先生がかけてんだよぉ」

とのこと。

小学校でデンジャーゾーンかけるって,どんなシチュエーションだよ?

まぁ,確かに,つんの担任は我々よりちょい下だから,まぁ,世代っちゃぁ世代。
ちょうど,30年前の曲だからねぇ。先生も10代だもんねぇ。

しっかし,おかげで今朝は家出て歩いてる時から,回ったじゃないのよ,
デンジャー・ゾーン

どうしてくれんだよ。
午前中,試験監督しながらも,頭ん中でヘビーローテーションすんだから,タチが悪い。

あぶねー,あぶねー。もうちょっとで口ずさむとこだったぜ。


2016年1月19日火曜日

Share your thoughts

そうか…2ヶ月も放置してしまっていたか…

いつの間にか年も越してしまったしなぁ…

ま,でも何事もなかったかのように投稿します。
何事もなかったかのようにお読みください。

さて,今日はコミュニケーションの話。
今年度の初めに,人と人とのリアルなコミュ力が必要だよ,ということを書かせていただいた。

友達との間のコミュニケーション,学生と教員とのコミュニケーション,家族間のコミュニケーション,などなど。

言い方を変えると,いかに自分の考えを他人とシェアするのか,ということになる。
できるだけ多くのことをシェアできれば,お互いの理解も進み,無用な誤解や諍いを避けることにもつながるだろう。

情報理論では,この「シェア」する情報の量を「相互情報量」と呼ぶ。
相互情報量とは,平たく言えば,AさんとBさんが共有する情報の量である。
別な表現を使えばこうなる。例えば,Aさんが情報を伝える側(送信者)で,Bさんが情報を受け取る側(受信者)であるとしよう。この時,相互情報量が意味するものは,AさんがBさんに伝えた情報のうち,正しく,つまり誤解なく伝わった情報の量ということになる。
デジタル通信の世界では,単位時間,例えば1秒間あたりの相互情報量を考えると,それはすなわち,1秒あたりに誤りなく伝達される情報の量,つまりビットレートということになるのである。

何の話?と思っている方もいると思うので,具体的な本題に入る。

昨日からの2日間,東北大学の電気通信研究所で電子情報通信学会マルチメディア情報ハイディング・エンリッチメント研究会(EMM研究会)が開催され,ウチの学生も3件発表を行なった。こういう研究発表は,アカデミックな世界で言えば,まさに考えをシェアする行為そのものである。
他の研究者や学生と問題や考えを共有し,議論を深めることにより,問題が解決したり,新しいアイディアや技術が生まれたり,新たな問題が発見されたりすることになり,その分野の学問や技術そのものの進展にもつながることが期待される。
学生の研究指導をする立場で言えば,というか自らの研究を進める上でもそうなのだが,この手の研究会では,発展途上の研究について講演したり,新しい問題提起をすることもできる。というか,そういう話ができるところにこそ,メリットがあるようにも思う。
学術雑誌に投稿する査読付論文だとそれなりの完成度や新規性が求められるが,研究会はそこまでの縛りはないので,さすがにあまりにお粗末な話はできないまでも,少し気楽に自分が抱えている問題や自分なりのアプローチを話し,考えをシェアすることができるというわけ。

これって特に学生にとっては本当にうってつけで,研究室のゼミでは出なかったようなアイディアが外で発表することで得られる場合もあるし,気づかなかった問題点を指摘されて,新たな課題が見つかることもある。こうして僕らの研究活動は連綿と続いていくわけである。だから研究会や学会の場で(もちろんアフターでも…)他の研究者らと考えをシェアすることは学生のみならず,我々教員にとっても非常に重要な行為なのである。

寺山修司ばりに「書を捨てよ,町に出よう」とかいうと,少し意味が変わってしまうが,積極的に外に出て対外試合をすることはもっと推奨されるべき。これは学問もスポーツも同じだ。

今回の研究会で発表を行なったウチの学生たちも,それぞれベストを尽くしたと思うし,非常にいい質問やコメントをもらった。僕自身にとっても収穫の大きな研究会だったと思う。

さて,というわけで昨日,今日と仙台へ出張だったのだが,実は今日は研究会は昼前に失礼して,速攻で学校まで帰ってきた。学生たちは夕方まで研究会に参加していたのだと思う(多分)。
僕が急いで帰ってきた理由は,重要な会議があるから。議案そのものも重要だったが,非常に重要な発言をしなくてはならなかった。その発言によって,結論がどうなるのか,いろいろなシナリオが考えられたわけだが,結果としては想定していた最良の結果でも最悪の結果でもない,中庸のところでオチがついた。
ただ,収穫としては,僕や僕の周囲の人たちがどんな考えを持っていて,どんな問題を抱えているのか,そんなことをシェアできたと思うし,新しい課題も生まれた。自分の頭の中も少し整理ができたし,会議の前は結構頭に血が上っていたんだけれども,他の出席者と考えをシェアするうちに逆に冷静に考えられるようになり,この先に考えるべきこと,なすべきことが明確に見えてきたようにも思うのだ。
会議前と会議後の相互情報量は明らかに増加していたのだと思う。

というわけで,コミュニケーションの大切さを改めて感じることができた2日間でした,という話。

学生のみなさん(に限らず),外に出て,考えをシェアしよう
一歩踏み出して,声に出してみよう。
おそらく,少しだけ世界が変わって見えるはずだから。