2018年9月19日水曜日

新しい一歩

先週の9/13、14と横浜・大さん橋ホールにて、日本地ビール協会(クラフトビアアソシエーション)が主催するInternational Beer Cup 2018(IBC 2018)が開催されました。一応、ボクは昨年に引き続き、審査委員長という立場で審査会のオーガナイザの立場から参加させていただきました。あまりボヤくとアレなんだが、本当は取りまとめ役ではなく、審査のテーブルにつきたいんだけど....ま、今年はアメリカの World Beer Cupをはじめ海外の審査会に3回も参加させていただいているから不満は言えない。


この審査会には日本のみならず世界各国からさまざまなビールメーカーが自慢の品を出品している。これを経験豊かなジャッジが審査し、金・銀・銅メダルにふさわしいビールを選出するというわけ。単に受賞の栄誉だけではなく、出品したメーカーには、審査員が実際に審査テーブルで記入した審査シートのコピーがフィードバックされる。つまり、厳正な官能評価の結果とその議論のプロセスがそのまま出品者の元に届く。言い換えれば、オーガナイザである僕らも含め、審査を担当するジャッジはメーカーに対して出品されたビールの品質評価だけではなく、今後の品質向上のための助言についても責任を負うというわけだ。

昨年、この審査会の20年の歴史の中で史上初めて出品銘柄数が500を超えた。2年前に亡くなった小田良司前会長の夢でもあった500エントリーを達成して僕らも感激にひたったわけだが、今年はなんとエントリーが750を超えた。実に約1.5倍の成長を遂げ、審査やオペレーションの厳格さだけでなく、規模としても間違いなくアジアで最大の審査会と呼ぶにふさわしい新しいステージへと歩を進めたのだと思う。

審査結果はすでにウェブで公開されている。

今回はアジアからのビールの出品が特に伸びたことが注目点だが、結果もそれを反映している。国/地域別のメダル獲得数トップ5は以下の通り(カッコ内は金,銀,銅の内訳)。

  1. 日本 121(23, 42, 56)
  2. 中国 36(5, 17, 14)
  3. 台湾 17(5, 5, 7)
  4. 韓国 17(2, 5, 10)
  5. オーストラリア 8(2, 2, 4)
日本を含むアジア諸国/地域のメダル総数は総メダル数223の88.8%に及び、昨年のIBC 2017から約5ポイント上昇している。ヨーロッパからの出品が伸び悩んだことにより,ヨーロッパ諸国のメダル数が3ポイント減少していることもあるのだが、その分を食って余りある躍進を遂げたと言える。実は日本のメダル総数は昨年とほぼ変わらず、数としては1個減少している。つまり、アジアの躍進は日本以外の地域の成長を物語っており、日本を除く国と地域のメダル数は昨年の47から77へと30も増加している。総メダル数が昨年の202から223へと21増えたことを考えれば、この地域の躍進がいかほどのものか理解できるだろう。

このデータは、アジア諸国におけるクラフトビール文化の成長ももちろんあるのだが、一方で世界を代表する大企業AB InBevの影響も非常に大きいことは触れておかなくてはならない。AB InBevの傘下にあるGoose Islandが韓国と中国に醸造拠点を置いているが、77の受賞ビールのうち、この両者によるメダル数が11個に及んでおり、日本国内で最多のメダルを獲得した伊勢角屋麦酒の8個を上回っているのだから。ただ、それを差し引いてもアジアの成長ははっきりと伺われ、この傾向はこの先も続くのではないかと予想される。

また、IBCでは昨年から全スタイルを12のカテゴリーに分け、ボトル・缶部門とケグ(樽)部門でそれぞれ金メダルを受賞したビールの中からカテゴリーチャンピオンを選出している。ここでもアジアの躍進が目覚ましい。昨年のIBCでは全16銘柄のカテゴリーチャンピオンのうち、日本の銘柄が11、その他のアジア諸国は3に過ぎなかったが、今年は全14銘柄のチャンピオンのうち、日本が6、その他のアジア諸国が6(台湾3、中国2、韓国1)とほぼ分け合った形となっている。しかもこのうち、上記のGoose Islandの受賞はたった1銘柄だけなのだ。それを考えても、クラフトビール市場における今後のアジア諸国の成長から目が離せないんじゃないだろうか?

さて、AB InBevの話にも触れたけれど、今回は日本の大手の受賞があったことにも触れておかなければならない。キリンビールが今年の3月から販売している「本麒麟」がフリースタイル・ライトラガーというビアスタイルで金メダルを獲得したのだ。カテゴリーチャンピオンすら受賞を逃したものの、IBCの歴史の中でも大手の受賞はこれが初めてで、今後の影響も決して無視できない。これについてはいろいろなことを言う人もいるとは思う。ただ、IBCの審査が公平かつ厳格なものであるにも関わらず、大手の技術力の高さを考えれば、ボクはそれなりに妥当な結果なんじゃないかとも思う。いろいろな影響があるだろうが、もちろん、ボクはどちらかというとポジティブな影響があるのではないかと予想しているし、そうなってほしいと願っている。

さらに個人的には非常に嬉しいこともあった。ボクが住む東京都日野市で5年前に行なわれた発掘調査で発見された資料から復刻された「多摩地域最古のビール」であるTOYODA BEERがウインナスタイル・ラガーの金メダル、しかもダーク・ラガー部門のカテゴリー・チャンピオンを受賞したのだ!これは本当に嬉しい。醸造元さえ、日野市ではなく福生の石川酒造さんではあるのだけれど、市をあげて盛り上げている地元のブランドが受賞したことは手放しで喜びたい。

来年のIBCではエントリー数が大台の1,000に届くだろうか?そうなると審査会の運営方法も考え直さなくてはならなくなるかもしれないけれど、ボクらにとってはうれしい悲鳴だ。改めて、このコンペに関われる喜びを感じるし、この世界に誘い入れてくれた故・小田前会長に心から感謝したい。そして、世界中のジャッジ仲間たちにも心からお礼を言いたい

Thank you very much for joining our competition. 
Hope to see you soon again!!


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