2014年2月12日水曜日

サイダー部活動始

先日は,自称・サイダー部の2014年最初の活動を行なった。

今回は,オーストラリアの Thunder Road Brewing の坂本さんからお土産でいただいた Pear Head という洋梨のサイダーをテイスティングすることが主目的。前回の部活で残ったベアレンサイダーとも飲み比べをしてみた。


Pear Head は手摘みの洋梨オンリーで醸造されており,日本でいう果実酒に相当するが,ベアレンサイダーは,ほんの少しモルトが使用されており,正確には発泡酒になる。

ということでビールとサイダーは本来別物で,日本地ビール協会のビアスタイルガイドラインにもサイダーのスタイル定義は存在しないし,日本国内のコンペでサイダーが審査されることは現状では原則としてない。ところが,海外ではビールの審査会でサイダー部門があることも少なくない。

テイスティングするに当たっては,スタイルを定義したガイドラインが欲しいところだけれど,日本には残念ながらなさそう。探してみると,アメリカのBJCP(Beer Judge Certification Program)のスタイルガイドラインにはビールとは別にサイダーのガイドラインがきちんとある。

というわけで,今回テイスティングする梨のサイダー(正確にはペリー)のスタイルを確認してみた。
ガイドラインには,ペリーとしては細分すると 3 つのスタイル,
  • 27D: コモン・ペリー
  • 27E: トラディショナル・ペリー
  • 28D: その他のスペシャルティ・サイダー/ペリー
があるらしい。28Dは副原料などを使った他のカテゴリーに収まらないサイダーを対象としたものなのでちょっと違う。ということで,27Dと27Eのスタイルを簡単にまとめてみると…
  • 原料: 食用の洋梨(27D),ペリー用に栽培された非食用の洋梨(27E)
  • アロマ: 洋梨のキャラクターが認められるが,明らかなフルーティさがないこと。若い白ワインに類似した傾向を持つこと。(27D・E共通)
  • 外観: わずかに濁りがあるものからクリアなものまで。一般に極めて淡色。(27D・E共通)
  • フレーバー: 洋梨のキャラクターが認められるが,明らかなフルーティさがないこと。若い白ワインに類似した傾向を持つこと。ここまでは2つのカテゴリに共通。両者の違いは苦みで,(27D)苦みはない。(27E)ほのかな苦みがある。
  • マウスフィール:  フルボディに近い(27D・E共通)。渋みのレベルに両者の違いがある。(27D) 低~中レベルのタンニンに似た渋み。(27E)中~高レベルのタンニンに似た渋み。
  • 全体印象: 中程度の甘み。ほとんど発泡していないか,微発泡。非常にわずかな酢化は許される。ネズミ臭,粘りやオイリーな特徴は明らかな劣化の兆候。ここまでは共通。両者の違いは (27D) マイルド,(27E) 強いタンニン…とここはかなりしっかりした違いがある。
  • 初期比重: (27D) 1.050-1.060, (27E) 1.050-1.070
  • 最終比重: 1.000-1.020 (27D・E共通)
  • ABV: (27D) 5-7%, (27E) 5-9%
という感じ。大きな違いは原材料で,トラディショナル・ペリーの方が,タンニンが強く,苦みも感じられ,初期比重がわずかに高い分,度数が高いこともあるというような感じだろう。

今回の Pear Head は度数 4.5% でどちらのレンジにも入らないんだけど,おそらくスタイルとしては27D になるんじゃないかと思う。ちなみに,Pear Head はオーストラリアのブルワーがベルギーで醸造してオーストラリアに輸入されているサイダーなんで,いずれにしても,トラディショナルというイメージではない。

実際にテイスティングしてみた結果は次の通り。色は非常に淡くクリア(ベアレンサイダーと比べてもかなり淡いことが上の写真からもわかる)。洋梨の上品な香りが長く余韻として残り,甘みが強い。ボディはフルに近く,かなり控えめな微発泡で,甘いデザートワインのような印象。タンニンはあまり感じられず,甘漬けの梅干しに似たフレーバーをほんのわずかに感じる。

こう書いてみると,確かに 27D のスタイルにおおよそ合致しているけれど,スタイルにあるよりもかなりハッキリしたフルーティさを感じる。甘みが強く,度数がそれほど高くないこともあり,推測すると,最終比重をあえて高めに抑えて,果実味を残したデザインにしてあるのかな?という印象を個人的には受けた。そういう意味では,27D に近いけど,ブルワーの意図としては,27D のスタイルに必ずしも合致したものではないのかもしれないと思う。

どうなんでしょう? > 坂本さん

これに比べるとベアレンのサイダーはかなりドライに感じられた。こちらもいつもはすごくフルーティな印象を受けるんだけれど,Pear Head のフルーティさがなんせ強かったですかね。

スパイシーなアジア料理に合わせるといいかもしれない。
3 月,メルボルンに行ったら,また呑めるかな?ぜひフードとも合わせてみたいですね。


追伸: 会長,日本でもサイダーガイドライン,作りませんか?


0 件のコメント:

コメントを投稿