2014年1月11日土曜日

男は行く

井上陽水の『氷の世界』がリリースされて40年だそうだ。
今日は,その40年よりちょっと短い,とは言っても四半世紀,25年前のお話。

正確には26年前,1988年のこと。

この年の4月に僕は大学に入った。
大学入学とほぼ時を同じくして,僕は初めてのCDプレーヤーを手に入れた。
それまでは塩ビのいわゆるアナログ盤のお世話になっていたが,管理も大変だったし,劣化も避けられないので,ようやっと新しい音楽生活が始まったなぁ…と思っていた。

何枚かのディスクを買った(最初に買ったCDが何かはよく覚えていない )けれども,そうそうたくさんは買い揃えられるわけもなく,レンタルしてカセットテープにダビングして聞くことも多かった。

そんなある日,新札幌駅前のなじみの貸レコード屋で1枚のCDが目に止まった。

何に惹かれたのだろう?
見ている者を射抜くようなジャケ写か?あるいは一風変わったバンド名か?
僕は他の何枚かのディスクと一緒にその1枚もレジに運び,家に帰ったら,早速、プレーヤーにかけてみた。


頭をハンマーで割られるような衝撃が走った。

ボーカルのデカイ声。
鋭く響くギター。
強烈なリズムセクション。
そして,ある種文学的とも言える独特な言葉の数々。
ちょっとリベラルな匂いがしたところも僕の心を捉えたのかも知れない。

彼らこそ,その年の3月,すなわち,まさに僕が大学に入るちょっと前にEPICソニーからデビューした「エレファント カシマシ」なるバンドだった。


僕は瞬時に,このアルバムはレンタルで聞くべきものではない,所有すべき音であることを悟った。

徐々に埋まり始めた僕のCDラックに,貸レコード屋で僕の目を釘付けにした,彼らのあのこちらを射抜くような眼差しが並ぶことになるまでそう長くはかからなかった。

あれから25年。

今日,僕は,さいたまスーパーアリーナで行われた彼らの25周年ライヴを体験して来た。


彼らのライヴはこれまでも数多く見ているし,結婚してからはヨメとも日比谷の野音なんかによく通った(今日もヨメと一緒だった)。子供が生まれてからは,映画同様,ライヴに足を運ぶ機会もメッキリ減ったので,今日は数年ぶりに彼らのステージを楽しんだ。

しかも全37曲,4時間という圧巻のステージ。

デビュー当時から聞いてきた身としては,今ほど(てか,ぜんぜん)売れていなかった当時の曲をもっとたくさんやって欲しかったような気もしたが,それが彼らの25年のキャリアのうち,1/3 にも満たない部分であることを考えると,今日の構成は過去から現在まで程よくバランスのとれたものだったのかもしれない。僕の愛する4枚目のアルバム『生活』あたりの曲をガンガンやったら,それはそれで事件だろうし。

しかし,なんとも隔世の感がある。僕が彼らのライブを初めて見たのは,彼らとの出会いから数年後,野村ヤクルトが優勝した年の秋,札幌は琴似のライブハウス,ペニーレーンだった。当時は客も決して多くはなく,しかも全員着席,腕組みしたまま

みやもとぉ~!まじめにやれぇ~!!

なんつう,怒号が飛び交うライブ。ま,それも愛情だったわけだが…
それが今日はアリーナ14000人WOWOW で生中継と来たもんだ。

時代は変わる。

2時間半を超えたあたり,第2部の頭は,「今宵の月のように」「さらば青春」「昔の侍」と,当時のプロデューサーだった佐久間正英氏に捧げたかのようなシークエンスもあった。ちょうど,年末にNHKで放映された佐久間さんのドキュメンタリーを見ていたこともあり,ここは泣かずにはいられなかった。

事実,佐久間さんがいなければ,今の彼らはいなかったかもしれない。

この25年の間に音楽シーンは大きく変わった。

それでも,今日のステージを観れば,彼らの存在が現在の我が国のポピュラー音楽シーンにおいても ONE AND ONLY であることは明らかだ。それを再確認させてくれる,そのことを自問自答の末,結論付けさせてくれる,そんなステージだった。

これからも彼らは変わらず,このままやっていくんだろう。
僕も彼らをこれまでと変わらず,聴いていくんだろう。
そして,これからも僕自身も変わらず,自分の道を歩んでいくんだろう。

これからも,よろしく。

しかし,宮本よ,やっぱり『花男』は聴きたかったぞ。

宮本ぉ~!『花男』やってくれえぇ~!!!

↑しりあがり寿が挿絵を描いた詩集。今となっては貴重なお宝。

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