さて,中身はこれからゆっくり聞くとして,今日問題にしたいのは,CDの中身ではなく,規格の話。
上原ひろみは Telarc から作品をリリースしているが,日本での販売元はユニバーサル。
ユニバーサルは去年あたりから高品質なCDとして,純プラチナ反射膜を使ったハイエンドディスクとかいうのをリリースしている。これもその一つらしい。
これがよくわからない。
アルミよりも化学的に安定しているプラチナを使うから,レーザの乱反射が少なくなるので,ピックアップが正確になり,誤りが起こりにくいんだという話。これは理解できる。
しかしだ。宣伝文句には次のようにある。
プラチナ微粒子薄膜の抜群にきめ細かい特性は,CDのピットを最大限正確に,
かつ表面をきわめて平滑に形成することを可能にしました。
これにより,CDプレーヤーは記録された音楽情報を鮮度そのまま
微細もらさず読み取ることができます。
突き抜けるようなクリアネス,
極太なダイナミクス,
滑らかなタッチ,
雄大なステージ,
繊細なアンビエンス,
圧倒的なリアリティなど,
その音質はプラチナの持つ高品位なイメージそのまま。
???
「記録された音楽情報を微細もらさず読み取ることができる」までは理解できる。だから,符号で訂正しなければならない誤りが少ないってこともわかる。しかし,だからといって,クリアネス,ダイナミクス等々がなぜ向上するのだ?
プラチナを用いることで誤りが減った分,量子化ビット数を増加させて,収録可能な情報量を増やすことができるんなら,理解できない事もないが,どうやらそういうことではないらしい。
一方,このディスクはプラチナ薄膜を使うだけではなく,サンプリングレートが高く,量子化ビットも大きい高解像度なWAVE/AIFFファイルから,マスターディスクに落とすのではなく,直接ディスクをカッティングする「HRカッティング」なる技術を使っているのだという。
音質が向上している原因はプラチナではなく,どっちかってと,このHRカッティングの方なんじゃないんですか?
ってか,カッティング技術そのものより,44.1kHz/16bit でマスタリングするのではなく,サンプリングレートが 4 倍の 176.4kHz,量子化も 24bit という高解像度でデジタル音源を作っているわけだから,こっちが直接の原因なんじゃないか?という気がするんだけど,違うのか???
純プラチナ薄膜を使ったから,初めて高解像度なHRマスター音源を得ることができたってんなら,理解できるんだけど,そんなことはどこにも書かれていない。
というわけで,僕が誤解しているのかもしれないけれど,ディスクに使用した物質と音質がどう関係しているのか,ちょっと考えただけでは理解できない。
誰か,プラチナ薄膜と音質の関係,理論的に正確に教えてくれませんか?
素人にもわかるように説明しようと試みたけれど,肝心のところをごまかしてしまったために,何のことかまったくわからなくなってしまった典型的な例のようにも思えてきたけれど,どうなんだろ?
技術者を目指す諸君,一般のユーザには難しいことでもそれを平易に,かつ正確に伝えることが重要なのだよ。
ま,単に僕が誤解しているだけなら,悪いなぁと思わないこともないけれど,そういうミスリーディングを起こしかねない表現を使うのは,やっぱ感心しないよねぇ。
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